足場・建築や工事現場に欠かせない設備の種類や資格
足場は、建築や工事現場に欠かせない設備です。工事を安全に進めるためには、この足場を正しく組み立てることが必要になりますが、これは特別な教育を受けた者が担当しなければなりません。この記事では足場の種類や、足場の組み立てや解体のために必要な資格について解説していきます。
足場とはどんな設備?
足場とは、建築工事などの際に、高所で作業するために組み立てられる設備のことです。主に金属製の資材により構成されていて、いくつかの種類がありますが、この地面から垂直方向に組み立てられる「組立足場」と、屋上や梁などから吊り下げるように設置される「吊足場」に大きく分けられます。足場は、建築や工事現場に欠かせない設備であり、工事を安全に進めるためには、この足場を正しく組み立てることが必要になりますが、これは特別な教育を受けた者が担当しなければなりません。
工事現場の足場について
すでに触れたとおり、足場は組立足場と吊足場に大きく分類されますが、その中身をもう少し詳しく見てみると、組立足場は「枠組足場」「単管足場」「ブラケット一側足場」「くさび緊結式足場」「張り出し足場」「丸太足場」などに分類されます。さらに吊足場の中には「吊り棚足場」「ゴンドラ足場」があり、現場の状況などを考慮し、適切なタイプを使用します。
枠組足場
枠組足場は、金属製の管を枠型に組んだ足場のことで、多くの場合、ビル外壁に沿うように組み立てられます。建枠、ジャッキベース、連結ピン、階段枠、梁枠、手すり、壁つなぎなどの部材から構成され、日本でも長い間使用されている枠組足場は「ビティ」という別名で呼ばれることもあります。この呼び名は、日本に初めて輸入された枠組足場の製造元「ビティスキャホード」に由来するそうです。現在は、平成21年策定の「手すり先行工法等に関するガイドライン」に基づいた、安全な足場の組立てが求められています。
単管足場
単管足場は、単管(直径48.6mmの鉄パイプ)を使用して組み立てる足場のこと。金具とボルトによりパイプ同士をつなげていきます。設置スペースが限られるビルの隙間などにも設置できるため、小規模な工事で使われることが多いようです。設置がかんたんで、パイプの種類やサイズが多いことが特徴。もっともベーシックな足場だと言えます。
ブラケット一側足場
ブラケット一側(ひとかわ)足場は、ブラケットを取り付けた建地の上に足場板を敷いて組み立てられる足場のことで、「ピケ足場」と呼ばれることもあります。スペースに制約のある現場などで使用されることの多い足場です。
くさび緊結式足場
くさび緊結式足場もスペースに余裕のない現場で使われる足場で、複雑な形状の場所でも組み替えなどの作業に対応可能なことが特徴です。元々は低層住宅の工事によく使われていた足場ですが、組立てがかんたんなため、最近では中層から高層建築の足場としても使用されることがあります。
張り出し足場
張り出し足場は、なんらかの事情で地上から足場を組み立てられない場合に使われる足場です。建物の途中に張出材を設置し、そこから上方向に足場を組んでいきます。
丸太足場
丸太足場は、間伐材を使用した足場で、以前はよく使われていた方式の足場です。丸太足場の特徴は、その自由度の高さ。金属製の足場は正確に組まなければ、その強度を発揮することができないため、複雑な形状の建物に組めない足場もあるのですが、丸太の場合は弾力性があるため、組立ての自由度が高いのです。安全性などの面からあまり使われることがなくなりましたが、現在も東京タワーの高所作業をする際は、この丸太足場が使われているそうです。
吊り棚足場
吊足場の一つである吊り棚足場は、吊チェーンやクランプを使って建造物の鉄骨部分から吊り下げ棚のように組む足場です。多くの場合、地上から足場を設置することの難しい橋梁などでの作業用に組まれます。
ゴンドラ足場
ゴンドラ足場は、昇降装置の付いた仮設式の足場で、通常はビルの屋上からワイヤロープの先に取り付けた作業床を吊り下げる形になります。昇降は、作業床に設置されている巻上機により行いますが、風に弱いことが難点です。
ビルの屋上に巻上機とレールを取り付け、昇降と横移動を可能にした常設型ゴンドラもあります。
足場の組立てや解体に必要な資格
足場の組立てや解体は、とび職の役割です。とび職の人たちは高所作業の達人であり、現場の花形。足場を組むのは「足場とび」という専門の人たちです。
足場の組立て等作業主任者
足場の組立てや解体を行うためには、公的な資格を取得しなければなりません。この資格が「足場の組立て等作業主任者」というもの。ゴンドラを除く吊足場、高さ5メートル以上の足場、張り出し足場の組立てと解体などの作業を行う際は、足場の組立て等作業主任者技能講習を受講し、修了した人を作業主任者という作業の指揮を執る役割に指定しなければなりません。
講習は、学科試験を含め、総時間数14時間。年齢や専攻による科目の免除、また、とび技能検定合格者にも科目の免除があります。足場の組立て等作業主任者に合格すると、同時に「建築物等の鉄骨組立て等作業主任者」の資格も与えられます。金属製の部材を使用するタワーなどの骨組みを組立て、解体、変更するために必要な資格です。
日本の建築現場での死亡事故は、転落事故の割合が多く、足場の組立てと解体、変更を行うには、この講習を受けることが義務づけられています。建築現場だけでなく、イベント会場の設営や、巨大屋外広告の設置作業など、高さのある足場を組み立てる場合は必ず作業主任者が必要なので、足場に関わる仕事をする人は目標にするべき資格だと言えるでしょう。
とび技能士
とび職は国家資格であり、技能試験に合格することで初めてとび職と名乗ることができます。とび技能士の資格試験には実技もあり、「仮設の建設物の組立てや解体」「掘削」「作業の段取り」などの能力が試されます。3級のみ○×方式の学科試験もあり、2級以上を受験するには実務経験(学歴により異なる)が必要で、丸太と鋼管を組み立てる実技試験です。
これらの資格は、足場の組立てや解体に役立ちますので、将来、足場の世界で生きていくことを考えるのであれば、経験を積みながら資格を取得してキャリアアップを目指すといいでしょう。
足場での作業を安全に行うために
足場の上での作業は、高所で行うことになるので、転落事故とは隣り合わせです。建設業全体では、年間に100人以上の作業者が亡くなりますが、その半数近くは転落事故によるものです。足場は法律により設置ルールが定められていますが、事故の多くは転落事故を防止する対策がとられていなかったことで起きています。手すりが設置されていなかったり、安全帯が使用されていなかったりという、人的なエラーにより死亡者が出ているのです。安全第一は現場の鉄則であり、作業効率を重視するがために起きる、このような事故は防がなければなりません。国は平成27年、足場に関する法改正を行っており、法の厳格化により転落事故防止対策を強化しています。
足場の種類や資格について解説してきましたが、いかがでしたか?足場にはさまざまな種類があり、足場の組立てや解体をするためには、足場の組立て等作業主任者の存在が不可欠です。安全な作業環境を管理するための資格なので、足場の世界で生きる決意を持つ人にとっては、いい目標になるでしょう。